管理栄養士 過去問 2019年度版 part 13 121~130

管理栄養士2019

問題121

医薬品とその作用の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。

1.アンジオテンシンII受容体拮抗薬 ――― 尿中ナトリウム排泄抑制
2.アンジオテンシン変換酵素阻害薬 ――― 尿中カリウム排泄抑制
3.抗アルドステロン薬 ――――――――― 尿中ナトリウム排泄抑制
4.ループ利尿薬 ―――――――――――― 尿中カリウム排泄抑制
5.サイアザイド系利尿薬 ―――――――― 尿中ナトリウム排泄抑制

正解→ 2

解説

1.×
アンジオテンシンII受容体拮抗薬 ― ×尿中ナトリウム排泄抑制
→○尿中ナトリウム排泄促進

アンジオテンシンⅡは、血管を収縮させたり、副腎皮質からアルドステロンを分泌させて血中のカリウムの排泄、
ナトリウムの再吸収を促進し、血液の水分量を増やすことで血圧を上げる働きをします。
このアンジオテンシンⅡは受容体に結合してはじめて血圧を上げる作用を示すため、アンジオテンシンII受容体拮抗薬
によりアンジオテンシンⅡと受容体の結合を妨げることで血圧を下げる効果があります。

2.○
アンジオテンシン変換酵素阻害薬 ― 尿中カリウム排泄抑制
→正しい選択肢です。

アンジオテンシンⅡは、アンジオテンシンⅠがアンジオテンシン変換酵素の作用を受けることで作られます。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬によりアンジオテンシンⅡが作られるのを防ぐことで、血圧を下げる効果があります。

3.×
抗アルドステロン薬 ― ×尿中ナトリウム排泄抑制
→○尿中ナトリウム排泄促進

アルドステロンは血中のカリウムの排泄、ナトリウムの再吸収を促進し、血液の水分量を増やすため、血圧を上げる
働きをします。
抗アルドステロン薬は、アルドステロンの受容体に作用することでアルドステロンの働きを阻害します。

4.×
ループ利尿薬 ― ×尿中カリウム排泄抑制
→○尿中カリウム排泄促進

腎臓の尿細管のヘンレのループにおいてナトリウムとカリウムの再吸収を抑制することで利尿作用があります。

5.×
サイアザイド系利尿薬 ― ×尿中ナトリウム排泄抑制
→○尿中ナトリウム排泄促進

腎臓の遠位尿細管でのナトリウムと水の再吸収を抑制することで利尿作用があります。

問題122

78歳、女性。BMI17.5kg/m2。大腿骨頸部骨折にて入院。入院前から、歩いて買い物に出かけるのが大変だったと訴えており、
朝食はバナナ1本、昼食・夕食は配食サービス1食分を2回に分けて食べていた。エネルギー摂取量不足であった。
1日の目標エネルギー量は、1,400kcalである。
SOAPとその内容の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。

1. S ——— BMI17.5kg/m2
2. O ——— 目標エネルギー量は、1,400kcal/日
3. A ——— 朝食は、バナナ1本
4. A ——— エネルギー摂取量不足
5. P ——— 歩いて買い物に出かけるのが大変

正解→ 4

解説

◆SOAPとは
臨床において、患者さんが抱える問題解決を目標に診療する「POS(問題志向型システム)」を実践するための診療記録
方法の様式のひとつで、経過記録のことを指します。

【S】主観的データ(Subjective date)
【O】客観的データ(Objective date)
【A】評価(Assessment)
【P】計画(Plan)

1.×
S ——— BMI17.5kg/m2
BMIは「O:客観的データ」です。

2.×
O ——— 目標エネルギー量は、1,400kcal/日
目標エネルギー量は「P:計画」です。

3.×
A ——— 朝食は、バナナ1本
朝食の内容は「S:主観的データ」です。

4.○
A ——— エネルギー摂取量不足

5.×
P ——— 歩いて買い物に出かけるのが大変
患者さんの意見なので「S:主観的データ」です。

問題123

クワシオルコルにみられる特徴の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。

1.浮腫:あり  血清総たんぱく質値:正常  肝腫大:あり
2.浮腫:あり  血清総たんぱく質値:低下  肝腫大:なし
3.浮腫:あり  血清総たんぱく質値:低下  肝腫大:あり
4.浮腫:なし  血清総たんぱく質値:正常  肝腫大:あり
5.浮腫:なし  血清総たんぱく質値:低下  肝腫大:なし

正解→ 3

解説

正解:【3】

クワシオルコルは、マラスムスと共に、代表的なたんぱく・エネルギー栄養障害(栄養失調症)です。

・マラスムス :たんぱく質・エネルギーの欠乏で起こる栄養障害です。顕著な体重減少がみられます。

・クワシオルコル:主としてたんぱく質の欠乏で起こる栄養障害です。エネ ルギー摂取量はある程度保たれているため
体重減少は比較的軽度ですが、血清総たんぱく質値の低下とそれに伴う浮腫や、リポたんぱく質の合成能を損なうことで
肝腫大がみられます。

問題124

45歳、男性。事務職。身長170cm、体重75kg、BMI26.0kg/m2、腹部CT測定により内臓脂肪面積110cm2であった。
血圧125/80mmHg。空腹時血液検査値は、血糖100mg/dL、トリグリセリド140mg/dL。その他、特別な健康障害はみられない。
この患者の病態と栄養管理に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。

1.肥満症である。
2.メタボリックシンドロームである。
3.脂質異常症と診断される。
4.エネルギー摂取量は、35kcal/kg標準体重/日とする。
5.1か月に10%の減量を目標とする。

正解→ 1

解説

1.○
肥満症である。
→ 正しい選択肢です。
BMI25?35で肥満、35以上で高度肥満となります。
それに加え、肥満に起因・関連する健康障害があるか、内臓脂肪の蓄積があれば肥満症(BMI35以上では高度肥満症)と
診断されます。
出題の男性は、肥満(BMI26.0kg/m2)と内臓脂肪の蓄積(腹部CT測定により内臓脂肪面積110cm2)から肥満症であると
判断できます。

2.×
メタボリックシンドロームである。
→出題の男性は、メタボリックシンドロームには該当しません。

メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積を必須項目とし、高血糖・高血圧・脂質異常のうち2つ以上を合併している
場合に診断されます。
それぞれの基準値は以下の通りです。

・ウエスト周囲径
男性85cm以上、女性90cm以上
(内臓脂肪面積100cm2以上に相当)

・血糖値
空腹時血糖110mg/dL以上

・血圧
収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上の両方またはどちらか

・血清脂質
トリグリセリド150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満の両方またはどちらか

3.×
脂質異常症と診断される。
→出題の男性は、脂質異常症とは診断されません。

脂質異常症の診断基準は以下の通りです。
・高LDLコレステロール血症:
LDLコレステロール140mg/dl以上

・低HDLコレステロール血症:
HDLコレステロール40mg/dl未満

・高トリグリセリド血症:
中性脂肪150mg/dl以上

4.×
エネルギー摂取量は、35kcal/kg標準体重/日とする。
→肥満症の食事療法では、摂取エネルギーは25kcal/kg標準体重/日以下とします。高度肥満症では、20?25kcal/kg
標準体重/日以下とします。

5.×
1か月に10%の減量を目標とする。
→肥満症では、3?6カ月を目安に現体重の3%の減量を目標とします。
高度肥満症では、合併する健康障害に応じて現体重の5?10%、またはそれ以上の減量を目標とします。

問題125

55歳、男性。身長170cm、体重65kg、BMI22.5kg/m2、普通の労作。血糖コントロール不良により強化インスリン療法
(毎食前超速効型インスリンと就寝前持続型インスリンを注射)が導入された2型糖尿病患者の栄養管理に関する記述
である。誤っているのはどれか。1つ選べ。

1.エネルギー摂取量は、30?35kcal/kg標準体重/日とする。
2.炭水化物エネルギー比率は、50?60%Eとする。
3.食事はインスリン注射後、直ちに摂取する。
4.低血糖発作時には、ブドウ糖を摂取する。
5.シックデイ時には、水分の摂取量を制限する。

正解→ 5

解説

1.○
エネルギー摂取量は、30?35kcal/kg標準体重/日とする。
→正しいです。
出題の患者は、“普通の労作”となっていますので、エネルギー摂取量は、30?35kcal/kg標準体重/日で適切です。
軽い労作では25~30kcal/kg標準体重/日、重い労作では35kcal/kg標準体重/日?が適切なエネルギー摂取量です。

2.○
炭水化物エネルギー比率は、50?60%Eとする。
→正しいです。
炭水化物は摂取エネルギーの50~60%、たんぱく質は標準体重1kg当たり1.0~1.2g、のこりを脂質で摂取します。

3.○
食事はインスリン注射後、直ちに摂取する。
→正しいです。
出題の患者が使用している「超速効型インスリン」は、注射してから10~20分と早い時間で効果が現れるため、食事の
直前に注射します。

4.○
低血糖発作時には、ブドウ糖を摂取する。
→正しいです。
低血糖では、冷や汗、手足の震え、動悸、意識障害などの症状があらわれます。
症状を感じたらブドウ糖を摂取し安静にします。

5.×
シックデイ時には、水分の摂取量を制限する。
→誤りです。
発熱、下痢、嘔吐などによる体調不良、または食欲不振のため食事ができない時をシックデイといいます。
シックデイ時には、脱水を防ぐために十分な水分の摂取が必要です。

問題126

脂質異常症の栄養管理に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。

1.高カイロミクロン血症では、脂質のエネルギー比率を20?30%Eとする。
2.高LDL-コレステロール血症では、飽和脂肪酸の摂取を控える。
3.低HDL-コレステロール血症では、トランス脂肪酸の摂取を控える。
4.高トリグリセリド血症では、アルコール摂取量を25g/日以下とする。
5.高トリグリセリド血症では、果糖を含む加工食品の摂取を減らす。

正解→ 1

解説

1.×
高カイロミクロン血症では、脂質のエネルギー比率を20?30%Eとする。
→誤りです。
脂質異常症では脂質エネルギー比率を20~25%としますが、高カイロミクロン血症がみられる場合には、
急性膵炎予防のため脂質エネルギー比率を15%以下とします。

2.○
高LDL-コレステロール血症では、飽和脂肪酸の摂取を控える。
→正しいです。
飽和脂肪酸のエネルギー比率を7%未満とします。

3.○
低HDL-コレステロール血症では、トランス脂肪酸の摂取を控える。
→正しいです。

4.○
高トリグリセリド血症では、アルコール摂取量を25g/日以下とする。
→正しいです。
高トリグリセリド血症では、トリグリセリドの原料となるアルコールや糖質に注意が必要です。

5.○
高トリグリセリド血症では、果糖を含む加工食品の摂取を減らす。
→正しいです。

問題127

腸疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1.潰瘍性大腸炎では、白血球数の低下がみられる。
2.クローン病では、チャイルド分類で重症度を評価する。
3.イレウスでは、経腸栄養法を選択する。
4.たんぱく漏出性胃腸症では、高たんぱく質食とする。
5.過敏性腸症候群では、抗TNF-α抗体製剤が用いられる。

正解→ 4

解説

1.×
潰瘍性大腸炎では、白血球数の低下がみられる。
→大腸に炎症が起こっているため、白血球数の増加がみられます。

2.×
クローン病では、チャイルド分類で重症度を評価する。
→クローン病の重症度の評価は、IOIBDスコアなどによって行われます。
チャイルド分類は、肝硬変の重症度を評価するためのものです。

3.×
イレウスでは、経腸栄養法を選択する。
→イレウスは腸管の通過障害が起こっている状態のため、経腸栄養法は禁忌となります。

4.○
たんぱく漏出性胃腸症では、高たんぱく質食とする。
→正しい選択肢です。
たんぱく漏出性胃腸症では、たんぱく質が消化管内腔へ漏れ出すことで、低たんぱく血症がみられるため、
高たんぱく質食とします。

5.×
過敏性腸症候群では、抗TNF-α抗体製剤が用いられる。
→抗TNF-α抗体製剤は、クローン病や潰瘍性大腸炎に用いられます。

問題128

非代償性肝硬変で上昇する項目である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1.血清総コレステロール値
2.血中アンモニア値
3.フィッシャー比
4.血漿膠質浸透圧
5.早朝空腹時の呼吸商

正解→ 2

解説

肝硬変は「代謝期」と「非代謝期」に分類されます。
◆代謝期:肝機能はまだ維持できている
◆非代謝期:肝機能は維持できていない

<非代謝期の症状>
・黄疸
・腹水
・肝性脳症
・低血糖

1.×
血清総コレステロール値
コレステロールは肝臓で生成されるため、肝機能が維持できていない場合には数値は下がります。

2.○
血中アンモニア値
アンモニアは肝性脳症の誘発となることから、増加します。

3.×
フィッシャー比
フィッシャー比は「分岐鎖アミノ酸(BCAA)/芳香族アミノ酸(AAA)」で表され、肝硬変では分岐鎖アミノ酸(BCAA)が
減少し、芳香族アミノ酸(AAA)が増加するため、フィッシャー比は低下します。

4.×
血漿膠質浸透圧
血漿中のアルブミン濃度が低下するため、血漿膠質浸透圧が低下し、腹水の要因となります。

5.×
早朝空腹時の呼吸商
肝臓でのグリコーゲンの貯蔵量が減少しているため、低血糖状態になります。早朝空腹時は糖質利用が減るため、
脂質利用が増え呼吸商は低下します。

問題129

消化器疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1.脂肪肝では、肝細胞内にコレステロールが過剰に蓄積する。
2.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では、インスリン抵抗性が増大する。
3.急性胆嚢炎では、血清CRP(C反応性たんぱく質)値が低下する。
4.急性膵炎急性期では、尿中アミラーゼ値が低下する。
5.慢性膵炎非代償期では、グルカゴン分泌が亢進する。

正解→ 2

解説

1.×
脂肪肝では、肝細胞内にコレステロールが過剰に蓄積する。
脂肪肝は、肝細胞内に「中性脂肪」が蓄積した状態のことをいいます。

2.○
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では、インスリン抵抗性が増大する。
肝硬変に移行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、インスリン抵抗性が見られます。

3.×
急性胆嚢炎では、血清CRP(C反応性たんぱく質)値が低下する。
急性胆嚢炎は、血清CRP値は「上昇」します。(3mg/dl以上)

4.×
急性膵炎急性期では、尿中アミラーゼ値が低下する。
急性膵炎急性期では、尿中アミラーゼ値は顕著に「上昇」します。

5.×
慢性膵炎非代償期では、グルカゴン分泌が亢進する。
グルカゴンは膵臓から分泌流されるため、慢性膵炎においても「抑制」されます。

問題130

合併症のない女性の高血圧症患者の栄養管理に関する記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。

1.食塩6g/日未満とする。
2.魚(魚油)の摂取を推奨する。
3.飽和脂肪酸の摂取を控える。
4.カリウムの摂取を制限する。
5.エタノールは、10?20mL/日以下とする。

正解→ 4

解説

1.○
食塩6g/日未満とする。
食塩摂取は6g/日未満とします。

2.○
魚(魚油)の摂取を推奨する。
肉類などに多い飽和脂肪酸は控え、多価不飽和脂肪酸の多い魚の摂取を推奨します。

3.○
飽和脂肪酸の摂取を控える。
2と同じです。

4.×
カリウムの摂取を制限する。
合併症のない高血圧症では、カリウム摂取制限は必要ありません。

5.○
エタノールは、10?20mL/日以下とする。
エタノール摂取量は、女性:10?20mL/日以下/男性:20?30mL/日以下です。

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